政夫「は~あ、明日はお客さんとの接待ゴルフかあ…あのヘタクソ部長の
プレイにヨイショするのも疲れるんだよな~休日ぐらい休みてえよ
俺っていつまでこういう生活続けるんだろう」
エリ「そこの悩める青年よ、わらわに任せるのじゃ!」
政夫「誰ですか、イキナリ人の部屋に四足歩行で踏み込んで」
エリ「わらわは喋って踊れる魅惑の子豚!エリザベー㌧じゃ、しかし、
今は、わらわの家畜的魅力などはどうでもよい!
わらわは、そなたの未来に警鐘をならすためにやってきたのじゃ」
政夫「なんですって?」
エリ「カーン、カーン!」
政夫「ちょっとちょっと!本当に鐘を鳴らさないで下さいよ、こんな夜中に
ご近所に迷惑じゃないですか」
エリ「ご近所の苦情を気にしている場合では無いぞよ!
わらわは、そなたの未来を『データマイニング』で予測したのじゃ!」
政夫「なんですか?データマイニングって?」
エリ「そんな事も知らんのか?『データマイニング』とは
蓄積されたデータから意味のある関連やパターンを発見する事じゃ!
よいか?マイニングは、もともと採鉱という意味なのじゃ、
だから、鉱山から利益が出て役に立つ鉱石を掘り出すことがマイニング
になる。よってこの言葉を使ったデータマイニングとは、コンピュータ
に蓄積した膨大なデータの中から、意味のある相関関係や有効なパターン
を発見する技術という意味になるのじゃ。」
政夫「なんだか、ピンと来ません…」
エリ「そなたはニブイのう…例えば、コンビニやスーパーでのデータマイニング
で『ビールを買う客はいっしょに紙オムツを買うことが多い』とか、
『雨の日は肉の売上が良い』という関係を
発見できたという、有名な事例もある。
また、クレジットカードの利用履歴を解析することにより、不正使用時
に特徴的なパターンを見つけ出し、あやしい取引を検出するなどの応用も
考えられておるのじゃ。
膨大なデータの山の中から潜在的な顧客ニーズを発見したり、年代別の嗜好
を発見する事に役立てたりするなど、データマイニングを行うことで、
さまざまな蓄積データの活用が可能になるのじゃ、わかったか!」
政夫「はあ、要はデータマイニングというのは、大量に蓄積されるデータを
解析し、その中に潜む項目間の相関関係やパターンなどを探し出す技術
なんですね、で、そのデータマイニングとボクにどのような関係が…」
エリ「まだわからんのか?わらわは、おぬしのあらゆる個人データから、
データマイニング分析を行い、そなたの未来を予測してやったと言うのじゃ」
政夫「ええっ?どっからボクの個人情報を入手したんですか」
エリ「そんな闇のルートの話はどうでもよい!重要なのはおぬしのこれからの
人生がお先真っ暗だということじゃ!」
政夫「ええ~?それは困りますよ~。ホントですか?」
エリ「うむ、的中率は98%じゃ」
政夫「高っ!」
エリ「良く聞くがよい、おぬしは明日の接待ゴルフで運命的な出会いをする」
政夫「出会いですか?誰に」
エリ「美人のキャディさんに一目惚れするのじゃ」
政夫「マジですか!」
エリ「しかし、そのキャディさんはとんでもない女なのじゃ」
政夫「ど、どんな女性なんですか」
エリ「料理はしない、洗濯では干すときパンパンしない、トイレは掃除しない
お喋りが止まらない、お菓子も止まらない、バーゲンには命がけ、
お前のギャグには冷たい、ジャニーズには熱い、ブランドには弱い
便座を上げっぱなしにしておくとキレる、
とにかくとんでもない女なのじゃ」
政夫「結婚するのかよ!」
エリ「そうじゃ、おぬしは明日であう美人キャディと結婚するのじゃ」
政夫「でも、美人なんでしょ、なら多少の事は目をつぶっても…」
エリ「おぬしはなにもわかっておらんのじゃ!しかもその女、年齢を
6歳もサバを読んでおるのじゃ」
政夫「マジですか!」
エリ「そしておぬしが、その女が三十路で年上だと気づくのは
結婚4年目に運転免許書をチラ見した時になるのじゃ」
政夫「遅っ!」
エリ「しかも、その女、決して過去の写真を見せようとせぬ、
学生時代の卒業写真の自分の写真までご丁寧に黒塗りしてあるのじゃ」
政夫「な、なんでそんな事するんだよ」
エリ「気の毒すぎて、わらわの口からはとても言えないのじゃ
心配するな、結婚5年目にその女の同級生から、卒業写真を
見せてもらう際に、ちゃんとそなたは驚愕の真実を知る事になる」
政夫「だから、その驚愕の真実って何なんだよ!」
エリ「そうだな、BGMで言うと、ベートーベンの『運命』といった所じゃのう」
政夫「ジャジャジャジャーンかよ!そんなこと言われたら、
ますます気になるじゃんよ!」
エリ「まあ、そんなお前にもささやかな、幸せもある、心配するな」
政夫「ホッ…良かった、やっぱりそうだよね」
エリ「今から5年後の4月9日に、通勤途中に500円玉を拾うのじゃ」
政夫「ささやか過ぎるだろうがよ!」
エリ「心配するな、その500円玉は交番に届けても、落とし主が現れず、
半年後には結局おぬしのものになるのじゃ」
政夫「そんな幸せ、あんまり、嬉しくないよ」
エリ「そうじゃな、おお、そうじゃ、そなたには結婚3年目でカワイイ娘が
生まれるのじゃ」
政夫「おお、イイじゃんイイじゃん、そういう事を教えてくれなきゃね」
エリ「しかし、その娘は妙に母親にも父親にも似ず、容姿は妻の父に
似てくるのじゃ」
政夫「うう、微妙にイヤかも」
エリ「しかも、その娘、わずか5歳にして、そなたと一緒の入浴を拒否するのじゃ」
政夫「なにい!早すぎるだろ!」
エリ「更にその娘、思春期になるとそなたの下着と自分の洗濯物を一緒に
洗われる事を拒絶して、結果そなたは自分の分の洗濯物だけ、
自分で洗うハメになるのじゃ」
政夫「なんだか、切ない話だなあ…」
エリ「さらに、その娘はいつまで立っても嫁に行かず、周りからは、
行かず後家と言われるようになるまで、そなたのスネをかじり続けるのじゃ」
政夫「あのさあ、ゲンナリする様な余計な情報まで教えなくていいよ」
エリ「そして、おぬしは定年後、娘がシングルマザーかつ高齢出産で生んだ
孫の世話を押しつけられて、腰に爆弾を抱えながら、やんちゃな
男の子のヒーロごっこの相手をする事になるのじゃ」
政夫「ぐはあ」
エリ「まあ、と言うわけで、そなたの未来は、お先真っ暗じゃ」
政夫「ああ、かなり中途ハンパにな」
エリ「そのお先真っ暗な人生を回避する方法を教えてやる為に、わらわは
ここに来たのじゃ」
政夫「ああ、そうなのか」
エリ「そうじゃ、おぬし、明日のゴルフに行くのを止めるのじゃ、
仮病でも使って休めば、あの女に出会う事はないし
未来もリセットできるのじゃ」
政夫「明日ゴルフに行かなければ、未来が変わるんだな?」
エリ「そうじゃ、少なくとも今回の予測よりは、マシな人生が待っておる
じゃろうな、さあ、取引先と上司にお詫びの電話を入れるのじゃ」
政夫「………」
エリ「早くするのじゃ!」
政夫「いいよ、俺、明日ゴルフに行く」
エリ「なんじゃと?気は確かか?」
政夫「なんかさ、さんざん未来の事教えてもらって、イヤな事だらけだったけど
人生って、そんなものなんじゃないのかな」
エリ「わらわが、せっかくそなたを幸せにしてやろうと思っておったのに!」
政夫「いいよ、別に、イヤなことって言っても、よく考えると、全然対した事
ないじゃん、健康で、孫の顔が見られるまで長生きできるんだったら
それほど悪い人生でもないさ」
エリ「バカじゃのう、おぬし」
政夫「はっはっは、俺は昔っからバカなんだよ」
エリ「苦難続きじゃぞ」
政夫「人生に苦労は付き物だよ」
エリ「じゃあ、最後にもう一つだけ未来を教えてやるのじゃ」
政夫「なんだよ」
エリ「苦労は絶えぬが、お前は死ぬまで家族と仲良く過ごすのじゃ」