サンタ「ハッピーメリークリスマス」
子供「誰だお前!」
サンタ「誰だって…そりゃないだろ?サンタさんだよ」
子供「クリスマスはもう終わってるよ」
サンタ「ああ、知ってる、俺はいつも出遅れるんだ」
子供「じゃあ、サンタとしては落第だね」
サンタ「手厳しいな、せめてうっかりさんと言ってくれ」
子供「うっかりし過ぎじゃん」
サンタ「そんなことより、ワシが何故ココに来たか知りたくないか?」
子供「遅まきながらプレゼントを持ってきたんだろ」
サンタ「甘いな、世の中そんなに簡単に欲しいモノが手にはいるわけ
ないだろうが!」
子供「ああ、そう?じゃあ帰りなよ、目障りだから」
サンタ「え?そんなにアッサリ?もっと、懇願とかしないの?
プレゼント欲しいんだろ?」
子供「パパから貰ったから、もういらない」
サンタ「え、そうなの、パパからねえ…
サンタさんとか、信じてないんだ…」
子供「今までは信じていなかったけど、今は実際に目にしているからね
信じてはいるよ、ただし、実在のサンタが、プレゼントを出し渋る
底意地の悪い人間だとは思わなかったけどね、
僕の友達もみんなこの事実を知ったら
驚くだろうな…」
サンタ「あれ、それはマズイな、プレゼントあげるから、余計な事を
吹聴するのは止めようね」
子供「別にいらないんだけど、断るのも可哀相だから貰ってあげるよ、
で、なにをくれるんだい」
サンタ「時代の『ニーズ』に合わせて、ワンダースワンだ!」
子供「子供相手に『ニーズ』とかいう小難しい横文字を
使うのはやめなよ。っていうかそれ以前に全然、
時代の要望に合ってないじゃん。」
サンタ「なにい!ワンダースワンは既に時代遅れなのか?
既に携帯ゲーム業界では『イノベーション』が
行われていたのというのか!」
子供「あのさあ、『イノベーション』って技術革新とか新機軸とか
いう意味で使いたかったんだろうけど、無理矢理横文字を使うのは
やめなよ、見苦しいよ…」
サンタ「なにお!お前こそ、ガキのくせに会話の『イニシアチブ』を
取ろうとするのはやめろ!」
子供「普通に『会話の主導権』って言いなよ」
サンタ「馬鹿め、今の時代、日本語と外来語とを『シームレス』に
使いこなす事が出来なければ、一流のビジネスマンとは言えない!」
子供「あんたは、一流のビジネスマンじゃなくて、ただのサンタだろ?
『シームレス』は継ぎ目がないって言う意味だけど、会話が相手に
伝わりにくくなる表現だから、なるべく使うなよ」
サンタ「何を言う!その程度の言葉がわからん『情報リテラシー』が
不足している人間の方が悪いのだ!」
子供「ハイハイ、『情報リテラシー』はコンピュータに対する幅広い
基礎能力の事ね…」
サンタ「大体、私のプレゼント選定は、サンタとしての
充分な『ストラテジー』と『タクティクス』を練り合わせて
導き出した『ソリューション』であるから、なんの問題もないハズ
なのだ!」
子供「自分で意味わかって喋っている?」
サンタ「当たり前だ、
私のサンタクロースとしての 『コア・コンピタンス』は、
豊富なプレゼントの『インフラストラクチャー』と
それを柔軟に選び出す完璧な『マーチャンダイジング』の賜物
なのだ!」
子供「微妙に意味をはき違えて使っている様な気がするよ?」
サンタ「え?マジで」
子供「いいかい、さっきの会話で登場した、小難しい横文字の
意味をもう一度下に書き出してあげるから、意味を吟味して
ご覧よ」
『ストラテジー』…戦略
『タクティクス』…戦術
『ソリューション』…問題解決
『インフラストラクチャー』…基本構造、環境基盤
『マーチャンダイジング』…商品化計画
『コア・コンピタンス』…ライバルには簡単にまねされない、
企業内部に蓄積された長年のノウハウや独自技術の事
子供「ね?さっきのアンタの発言は
なんか意味がちぐはぐしてるでしょ?」
サンタ「うん、確かに」
子供「だから、今度人に話をする時は、もう少しわかりやすく
喋ろうよ」
サンタ「悪かった…オレはビジネスマンとして失格だ」
子供「だから、アンタは一流のビジネスマンじゃなくて、
ただのサンタだろ?」
サンタ「ああ、リストラされて、仕方なくサンタに転職したんだ」
子供「サンタってそういうスタンスの職業なの?」
サンタ「でも、トナカイには全部逃げられちまった」
子供「そりゃ、可哀想だね、ちゃんとエサはあげていたの?」
サンタ「当然だ、しかし、労組との労使交渉が決裂してしまってな
トナカイたちは、海外のチームに移籍してしまったんだ」
子供「野球選手みたいなトナカイだね」
サンタ「代わりに犬ぞりに挑戦して見たんだが…」
子供「サンタが犬ぞりっていうのもサマにならなそうだけど、
犬の調教は上手くいったの?」
サンタ「いいや、犬と間違えて、マグロを募集してしまったんだ」
子供「なんで魚介類なんだよ」
サンタ「彼らは力強さは問題なかったが、地上での酸素吸入に問題が
あってな、せっかく集まってもらったんだが、すぐに解散して
しまった」
子供「犬ぞりはどうなったんだよ」
サンタ「ああ、犬も当然再度募集したが、チワワとかチンチラとか
ミケとかナゴヤコーチンとか、およそソリには向かない連中ばかりが
集まってしまってな」
子供「募集時に犬種を絞りなよ、しかも犬以外の動物まで集まってるじゃん」
サンタ「そんなこんなで、結局犬ぞりも断念さ、はっ」
子供「結局、今日はどうやってココまで来たんだよ?」
サンタ「仕方ないから、人間大砲で…」
子供「北極から?この日本まで?ある意味スゴイ度胸だね」
サンタ「ああ、今日ほど自分を無謀な人間だと思った事はなかったよ
しかし、問題が一つあってな」
子供「どうしたの?」
サンタ「帰れないんだ、人間大砲で来たから」
子供「どこまで無計画なんだよ!」
サンタ「頼む、お前ん家に泊めてくれ!」
子供「ダメだよ!」
サンタ「ナゼだ!オレはサンタなんだぞ!」
子供「だとしても、クリスマスはとっくに終わってるから、
結局、単なる不審者じゃん」
サンタ「ぐへえ、仕方ない、悪いな、本当はお前にやろうと
思っていたけど、コレを使って帰る事にするよ」
子供「なんだよ?コレって」
サンタ「スノーモービルだ」
子供「さっさと帰れよ!」