後輩「うきゃ~、大変です~、センパ~イ」
先輩「どうした、落ち着け!」
後輩「ネットワークがバグって、プログラムが切断されて、
ダウンはデータベースしちゃって、もう大変なんです~」
先輩「お前の脳内の方が大変だな」
後輩「トラブルです!障害です!チョンボです!事件です!
ファイアーです!」
先輩「”ファイアー”ではないだろ、パニくりすぎだよ」
後輩「でも、大変が大変なんですよ、ああ、どうしよう」
先輩「だから、落ち着けと言っているだろう!
お前が騒いだ所で、事態は好転せん」
後輩「でも、落ち着いてる場合じゃないんです!」
先輩「落ち着け、まずは深呼吸しろ」
後輩「ヒッヒッフ~~ヒッヒッフ~~」
先輩「誰がラマーズ法で深呼吸しろと言った!
お前は今から出産するのか!」
後輩「出産する訳ないでしょ!僕はオコトです!」
先輩「オコトじゃなくて”男”だろ!
お前はいつから日本楽器に職業替えしたんだよ
だから、大きく息を吸って吐けと言っているんだ」
後輩「スースースー…」
先輩「吸うばかりじゃなく吐けよ」
後輩「グヒッ!ブバァ!ゥ、ハアハァ、ンゴッグ」
先輩「忙しいヤツだなあ、昔のサザエさんかよ」
後輩「ととと、とにかくなんとかしなきゃ
どど、どうしよう、マ、マニュアルで調べないと、
いやログを見るのが先かな、ああ、報告書も書かないと」
先輩「待て待て、障害の対処にも段取りってモンがあるんだ
まずは頭の中をクリアにして冷静になれよ
『ピンチの時こそクールになれ!』って
車田昌美先生もおっしゃっている」
後輩「はい!じゃあ、頭の中をクリアにします!」
先輩「そうだ、まずはそこからだ!」
後輩「ぬぼ~~~~~~~」
先輩「それはクリアにし過ぎだ、トラブルシューティング以前に
人間としての問題になってしまうぞ」
後輩「はっ!そうでした、センパイ、僕はどうすればいいんですか?」
先輩「よし、よく聞け!トラブル発生時の基本動作は以下の通りだ!」
・まず、最初に自分が落ち着く事。
・正確にかつ速やかに現象を把握する。
・関係者に報告・連絡・相談する。
→経験が浅いのであれば、素直に泣き付く事も重要。
・可能であれば応急処置を施す。
・障害の原因を追及する
→過去の事例を思い出す又は調べる
→マニュアルやネットにて調べる
→熟練者に助力を願う
・対応策を検討する
→対応策の基本は、素早く簡単でもっとも効率的な対処方法を
採用する。
→障害のダメージ潜在リスクによってはコストを投入してでも
本格的な対応策を講じる。
→あえて何もしないというのも対応策の一つである。
・被害部署にお詫びを入れて、対応策を説明する。
・二次災害の防止を検討する。
・対応策を実施する。
・関係者に対策完了を報告する。
・障害報告書を作成し、関係各位に提出する。
・関連者と協議し、再発防止策を検討する。
・再発防止策を関係各位に告知し、実施する。
・再発防止策の効果を確認し、効果の有無を結果報告書に
まとめて、報告する。
・障害の反省を踏まえて、手順書・マニュアル等の改善を行う。
・上記の一連の出来事を障害事例として資料にまとめ、
ファイリング(又はデータベース化)しておく。
後輩「ずいぶんと色々あるんですね」
先輩「そうだ、原因を突き止めて、対策をとったら、ハイおしまい
というワケにはいかないんだぞ」
後輩「面倒臭いです」
先輩「何を言っているんだ、当たり前の事だぞ」
後輩「じゃあ、今回のトラブルの件はセンパイに一任します」
先輩「ドアホウ!それじゃなんの成長にもならないじゃないか」
後輩「でも、そっちの方が解決が早いですから」
先輩「ったく仕方がないなあ、で、トラブルってのはどんな現象なんだ?」
後輩「わかりません!」
先輩「はあ?」
後輩「詳しい事はなにもわかりません!ただ大変なんです」
先輩「なんで詳しい事もわからないのに大変だってわかるんだよ!」
後輩「トラブルだからです!」
先輩「そうじゃないだろう~、ひょっとして
お前が勝手に火に油を注いで、事態を大きくしているんじゃ
ないんだろうな?」
後輩「へ?まさか~」
先輩「いいか?わかっている限りの事を正直に言え!
何が問題なんだ?どれが動かない?誰が困っている?」
後輩「えっと、私のパソコンが動かないんです」
先輩「…ん?それだけ?」
後輩「はい、まったく応答が無くなって、ウンともスンとも
いわないし、これはバグでダウンでクラッシュですよ」
先輩「馬鹿タレ!それはタダのフリーズだろうが!」
後輩「…そ、そうなんですか」
先輩「ctrl+alt+Delを押して、再起動をかければ修復するよ」
後輩「…セ、センパイ、す、スゴイ!
一瞬で原因を見抜いて、対応策を出してしまうとは」
先輩「わからないお前の方に問題があると思うぞ?」
後輩「イヤイヤ、やっぱりセンパイはスゴイ人です」
先輩「おだててもダメだよ、しっかり基礎から勉強しろ!」
後輩「生きていたらそうしますよ。
イヤ~、しかし、これで心起きなく逃げられますね」
先輩「何からだ?」
後輩「火事からです」
先輩「はあぁ?」
後輩「なんだ、センパイ知らなかったんですか?」
ここのビルの下の階から出火して、避難命令が出てるんですよ」
先輩「なにぃ!何でそれを早く言わない!
っていうか、お前はなにをしていたんだ!」
後輩「はぁ、私は自分のパソコンのトラブルが気になって
逃げるに逃げられなかったんです」
先輩「ぐはあああ!お前はアホだ~!
そしてそれに付き合った、俺もアホだ~!」
後輩「そうですよ、大体僕たち2人以外に誰もいない事に
早く気づきましょうよ、アハハハ」
先輩「お前が言うな!」
後輩「スミマセンねセンパイ、僕のせいでこんな事に」
先輩「本当だ!お前が変なトラブルの話しを持ちかけなければ…」
後輩「いえいえ、そこを謝っているんじゃないんです
この火事、実は僕が第一発見者で、消そうとして
近くにあった一斗缶に入っていた水をかけたんですけど
実は水じゃなくて、灯油だったんですよ
んで、怖いから、見て見ぬフリしちゃって、帰ってきたんです」
先輩「お前が物理的に火に油を注いで、事態を大きくしていたのかよ!」