【ステップ1】
[理想]
・さあて、ここいらでキャリアパスを向上させる為、1ランク、グレードの
高い会社に移籍するのが、自分戦略として妥当かな。
[現実]
・ちっくしょう、こんな仕事、やってられるか、辞めてやる~!
【ステップ2】
[理想]
・退職に置いては”なにごとも円満に”がセオリー
引き継ぎ資料を完璧にまとめて、自分の後継者とも言える
有能な後輩に全てを託したから万事OKである。
[現実]
・あれ?辞表ってどう書けばいいんだっけ?
【ステップ3】
[理想]
・転職先は以前から引き抜きの話を頂いていたA社でもいいのだが
転職斡旋会社に行っておいた自分の人材登録のプロフィールを見て
声をかけてくれたB社も捨てがたい、さて、どうしようか?
[現実]
・失業手当って、少ねえなあ…
【ステップ4】
[理想]
・結局、報酬額が高かったB社に転職先を決めた、B社は私のキャリアパス
を見て、プロジェクトの管理を任せてもよいと判断したようだ。
次週、形だけの面接を受ける為に、B社を訪問する事とする。
[現実]
・足がくたびれる程、職安を回っても、これと言った仕事が見つからない
仕方がないので、同業者である会社のホームページを回って
手当たり次第に中途採用問い合わせのメールを送ってみる事にする。
【ステップ5】
[理想]
・面接でB社の経営陣の一通りの面々と顔を合わせる、社長を初めとして
皆、以外と若い事に驚いた、新進気鋭の若い会社らしい、社長も若くて
野心的だ、社長は私の手を握り、幹部候補員として、会社を背負って
欲しいとの言葉をもらう。困ったな、ちょっと買いかぶられすぎなのでは
ないだろうか?しかし、信頼されたからには、それに応えるのが
一流の技術者というものだろう。気が引き締まる思いである。
[現実]
・大半の会社から「履歴書送ってちょ」という返事をもらう、
門前払いを受けなかっただけでも、もっけの幸いだ。
書類選考で落とされる場合や、書き損じの場合も考慮して
文房具やで大量の履歴書を購入する…
履歴書を書きながら、「以外と自分の経歴の年表書くのって難しいなあ」
とか「ああ、もっと資格取っておけば良かった」とか
愚にも付かない事を考える。
…ん?履歴書って写真が必要だったけ?
履歴書購入と一緒に写真を撮りに行かなかった自分を罵りつつ
また、写真屋に行く為に、再度、外出するハメになる。
【ステップ6】
[理想]
・折角、職場が変わるのだから、心機一転、済む場所も替える事にし、
引っ越しを行った、やはり2LDKの部屋はなかなかに快適だ
新しい会社は「すぐにでも来て欲しい」との事だったが、
今までの会社で頑張ってきた自分へのご褒美にちょっとしたバカンス
を楽しむ事にした、B社への入社日は一ヶ月後に決めて、それ間での
充電期間を海外で過ごす事にする。
[現実]
・やっとこさそれっぽい形に仕上がった履歴書を、手当たり次第に送ったが
どの会社からも反応がない、5社も送ったんだから、どこか一つぐらい
反応してくれよ~と思っていると、最初に送った会社から郵便物が届く
胸を高鳴らせながら中身を見てみると「今回の採用は見送らせて…」の
文字を発見、その場で、破り割く。
ちなみに、翌日にも返信があり「貴殿は残念ながら…」とか書いてある
もう、いいから不採用なら「×」って書いた紙だけ送ってくれよ~!
【ステップ7】
[理想]
・一ヶ月ぶりの帰国、グァムでの生活に慣れてしまったせいか、
すっかり時差ボケしてしまった。
いよいよ三日後から、新しい会社でプロジェクトマネージャと
しての手腕を発揮する事になる。モチベーションは十分だ。
[現実]
・なんで5社も送ったのに、全部落ちるかなあ!
こうなったら、仕方がないので10社でも20社でも
送ってやる~!
【ステップ8】
[理想]
・転職初日、私の部下となるエンジニアたちや、
私の上司となるCIOとの挨拶を済ませ、早速私の担当プロジェクト
が割り当てられる、かなりのビッグプロジェクトだ、予算額も
かなりの額に登る。マネージャとして「役者冥利に尽きる」というヤツかな、
絶対に私の手腕でこのプロジェクトを成功に導いてやる!
-完-
[現実]
・もう、不採用通知は見飽きたよ~、とヘコんでいた頃に
C社から、面接を受けて欲しいとの連絡がある
マジで?ラッキー!久しぶりにスーツに袖を通して、C社へ向かう
C社は十数人程度の小さな会社だ、ハッキリ言って
オフィスも狭い、うわっ、トイレが一カ所しかないじゃん。
C社の社長が言うには、「我が社には自分で考えない社員はいらない」
そうだ、自分で考えないって…マリオネットかよ
面接の最後には「私は自分の技術力には自身があります」とか、
大法螺を吹いてしまった、どうしよう…真に受けたら。
【ステップ9】
[理想]-完-
[現実]
・ああ、昨日の面接は散々だった、と恥じ入る間もなく
今後はD社から、「面接を受けろ」とのお誘いが
平均すると、だいたい5社に1社くらいは面接までたどり着くようだ
早速、面接の日取りを決め、今度は万全の面接対策を行うつもりだ
意気揚々と友達を呼びだし、面接官のシュミレートを行ってもらう事にした。
友人に演技指導のダメだしをしていると、
突然、C社から電話が!「どうせ、不採用だろ…」と思っていると
「取りあえず内定です」との連絡が…なにが取りあえずなんだろうか?
まあ、内定をもらったのは有り難いので二つ返事で「よろしくお願いします!」
と、表向きは誠意を込めて御礼を言っておく。
しかし、「直ちに入社誓約書を送ります、内定を出したんだから、他の会社を
受けたりしないように!内定取り消しの原因となります」というC社の総務課長
からの有り難い言葉に、心の底から青くなる。
【ステップ10】
[理想]-完-
[現実]
・とりあえず、用済みになった友人は速攻で帰ってもらい、
D社に連絡をする「明日の面接ですが急に体調不良で入院する事に
なりました、御社にご迷惑をかけるのも心苦しいので、この話は
無かったことに…」と見え透いたウソの断りの電話を入れる。
ああ、これでD社の方が待遇がよかったらどうしよう
と、今更ながらの後悔の念に苛まれる。
【ステップ11】
[理想]-完-
[現実]
・C社から送られてきた入社誓約書にサインをして、C社に送り返す。
信じられない事に、明日から出社しろとの事、就職決まったんだから
少し遊ばせてくれよ~!
【ステップ12】
[理想]-完-
[現実]
・転職先の会社に出社してみると、挨拶もそこそこに
突然、開発現場に連れて行かれる、ゲゲッ!ここの現場のプロジェクトって
思いっきり火を噴いているじゃん!今までのプータロー生活が一転し、
徹夜連チャンの帰れない日々が続く事に…
これじゃ、転職した意味がねえ~!
【後日談】
[理想]
・私がマネジメントしたプロジェクトは、様々な苦労もあったものの
結果的には成功であった、このプロジェクトで知り得たお客様や
技術者とのコネクションが、今後の私の重要な財産となる事だろう
打ち上げで飲んだ、シャンパンは今までのどの酒よりも美味く感じたのは
満足感が成せる技だろうか…今日は良い夢が見られそうだ。
[現実]
・後で判ったことだが、C社は自分を「不採用」としていたらしい
しかし、突然火を噴いていたプロジェクトのメンバが失踪同然で
辞めてしまい、変わりの要員が確保出来なかったから、
「不採用通知」を送付する直前に「採用通知」とスゲ替え
速攻で、後任の担当者として、送り込んだとの事。
嗚呼、人生とは諸行無常である。