雨が降りしきる道路を女は傘も持たずに歩いている
そこへ男が追いついて、ずぶ濡れの女を
後ろから優しく抱きしめる…
女は嗚咽を堪え、振り向き、そして男に向かって叫ぶ、
女「わからない、わからないわ!」
男「なにがわからないんだ、話してくれないか」
女「アプリケーションってなんなのよ?」
男「簡単さ、パソコンなんかで使っているプログラムの事だよ」
女「あなたっていつもそう!自分だけ全てを理解して得意げなのよ
でもいつも私は置いてけぼり、私の気持ちはどうなるの?
お願い!私にわかるように説明してよ!」
男にシャープなカカト落とし(ネリチャギ)を喰らわす女。
地面にめり込む男、額から流血しながら、意識が薄れてゆく
しかし、薄れ行く意識の中、女に語りかける。
男「…悪かった、俺はいつも自分のことばかりだったな
反省するよ。アプリケーションって言うのは、日本語
に訳すと、『応用』という意味になる。
だから、応用という名の通り、その時どきに合わせた
専門的な作業を行うプログラムの事なんだよ。
プログラムには、基本プログラムと応用プログラムの
2種類があるから、応用プログラムの方を表す言葉として
アプリケーションという言葉があるんだ」
女「じゃあ、基本プログラムってなんなの?」
男「基本プログラムっていうのは、OSの事さ、
WindowsやLinixが基本プログラム(基本ソフト)という事になる。
厳密に言うと、汎用的に全てのユーザに共通したコンピュータの基本的な
操作を提供するプログラムって事になるかな」
女「そんな、じゃあ、アプリケーションプログラム=プログラムって信じていた
私の立場はどうなるの?ああ、私の信じていたものが、音を立てて
崩れていくわ。もう、私の心の神殿は汚されてしまったのね」
既に彼女の心境は、八代亜紀の雨の慕情の世界である。
男「イヤイヤそこまで思い詰めなくても…
アプリケーションプログラムっていうのは、基本プログラム以外の
プログラムと言うことで、まあ君の認識でも日常生活に不便はないんじゃ
ないかな?」
女「イヤッ!そんな、お為ごかしで私を惑わせないで、
私はもう逃げないわ、真実からもアナタからも、目元の小じわからも
だから、私には真実を教えて頂戴!」
男「真実っていわれたってなあ、ええっと、アプリケーションプログラムと
いうのは、いわゆる特定の目的と機能を持った専門家のような
プログラムなんだ、いわば、基本ソフトという土台にたって、
特定のサービスを行う作業員だ、だからアプリケーションを利用するに
あたっては、目的に応じたアプリケーション選択が重要になるんだよ」
女「そうだったのね、じゃあ具体的にはどんな専門家がいるのかしら?」
男「そうだね、代表的なアプリケーションソフトには、Wordや一太郎などの
ワープロソフトやExcelなどの表計算ソフト、更にPhotoshopなどの
画像編集ソフトや、OracleやAccessなどのデータベースソフト、
さらにPowerPointなどのプレゼンテーションソフト、ゲーム、
Internet ExplorerなどのWebブラウザや、Outlook Expressなどの
電子メールソフトなんかがあるんだよ。
また、企業で使われる財務会計ソフトや人事管理ソフト、在庫管理ソフト
などもアプリケーションソフトの一種になるね。」
女「まあ、アナタって凄いわ、痺れちゃう。私、やっぱりアナタに首ったけなのね」
男「生まれて初めて、首ったけという表現を実際に使われたよ、
まあ、それじゃ今度こそ、僕のプロポーズを受けてくれるね?」
女「ええ、いいわよ。でも、一つだけ、私のお願い、聞いてくれる?」
男「なんだい?君のお願いだったら、何だって聞くよ」
幸せそうに微笑む女、失血でふらつく男、重なりあう二人の影、そこに…
母「お待ちなさい」
女「お義母様!」
男「ママ!」
母「この泥棒猫の願いなど、聞いてはいけません」
きりりとした和服に身を包み、日本傘を差した壮年の女性は
静かに、だがきっぱりと言い放った。
男「違うんだママ!彼女は僕のプロポーズをたった今…」
母「貴方は黙っていなさい、この女、プロポーズを受ける代わりに
私との同居を拒絶するつもりなのよ、とんだ女狐もいたもんだわ」
女「お義母様!そんな…」
母「アナタにお義母様と呼ばれる筋合いはありません」
男「彼女は結婚と引き替えにそんな冷酷な要求をだすような人じゃないよ
ねえ、そうだろう?」
女「ええ、私冷酷な女でも、計算高い女狐でもないわ…」
男「ホッ…そうだよね」
女「でも、お義母さまとの同居はイヤ!絶対にイヤ!」
男「ガビ~ン!」
母「ホッホッホ、ついに馬脚を現しましたわね」
女「うるさい!私はA型だから、アンタみたいな自分勝手なB型を見ていると
虫唾が走るのよ!」
母「自分勝手はアナタの方でしょ?」
女「あ~ら、お義母様には足下にも及びませんわ」
母「カチ~ン、前々から思っていたのだけど、アナタとは一度決着を
つけないといけませんわね」
女「いいわ、望むところよ!」
男「あのう…二人とも仲良くしようよ」
女「不可能よ!」
母「アナタは黙っていなさい」
女「覚悟はイイかしら?」
母「勝った方が息子を手に入れる…それでいいかしら?」
女「そんなものはいらないわ、私が勝ったら財産を頂けますかしら」
母「ますます本性丸見えね、行くわよ、というか逝ってもらうわよ!」
二人の電光石火の跳び蹴りが、空中で交差する。
その瞬間雷鳴が轟き、暗闇の二人の表情を、一瞬だけ映し出す。
母親は、光線銃を懐から取り出し、女に三連照射する、
しかし、女が居た場所には丸太が転がり、女の姿はドコにもない
母「変わり身の術…なかなかの手練れですね」
女「そういうお義母様こそ、よくお避けになられましたわ
巨像をも数秒で麻痺させる痺れ薬でしたのに」
いつのまにか、母親の右手には、女から打ち出された、
吹き矢の針が数本握られている。
男「ふ、二人とも何者なの?」
母「最近はこれくらいの動きが出来ないと『母は強し』とは言えないわ」
男「限度ってものがあるでしょ」
女「乙女の嗜みよ。お義母様、そろそろ本気を出してはいかが?」
母「生意気な小娘、よほど死にたいのかしら、パイルダー・オン!」
隣町の町営プールから突如出現した巨大ロボットが母親の元にやってくる
母親は頭頂部の操縦席に乗り込み、女を睨みつける。
母「泣いて謝るなら今のうちよ?」
女「誰が謝るんですって?我が血の契約に基づき、いでよバハムート!」
女は最強の竜を召還し、その背中に跨る。
女「覚悟しなさい、渡る世間は竜ばかりと言うのを、身をもって教えてあげるわ」
男「ヤメテよ~二人とも~」
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女「…っと、ちょっと!大丈夫?しっかりして」
男「んあ?喧嘩をやめて~♪二人を止めて~♪私の為に争わないで~♪」
女「なに言ってるのよ、アナタ、さっき倒れたのよ」
男「へ、ああそうか、良かった、夢だったのか…
そうだよね、キミがあんなヒドイ事するわけがないよね」
女「なんの夢を見たの?」
男「キミが僕に酷いことをする夢さ」
女「まあ、心外だわ、私がアナタに危害を加えるワケないじゃない
…それにしてもヒドイ出血ね、さっきのカカト落とし、強く蹴り
過ぎちゃったかしら?」
(今日のネタは過去のコラムのリメイクじゃけえのう)