メーラー
「ピンポン、メールが届いております」
ナツコ
「うわっ、このメーラ喋ったわ!」
メーラー
「送り主、リツコさんからのメールです、中身を読みましょうか?」
ナツコ
「へえ~最近のメーラは、音声案内してくれるのね~
便利な世の中になったもんだわね、ルックルックエキスプレスっていうんだ
変な名前ね、まあいいわ、じゃあ読んでくれる?」
メーラー
「祇園精舎ノ鐘の音、諸行無常ノ響きアリ、沙羅双樹ノ…」
ナツコ
「ちょっと、待ちなさい!誰が平家物語を読めと言ったのよ!
いま、リツコから届いたメールを読みなさいよ!」
メーラー
「失礼しました、では読み上げます
『ナツコ元気、同級生ではアタシとアンタが最後の独身だったけど、
ついにアタシ、結婚する事になりました。ゴメンね裏切ったみたいで
お相手はオーストラリア人のボブで挙式は来年よ、ナツコ、絶対来てね』
だそうです、可哀想なナツコさん、ご心中お察しします」
ナツコ
「余計な感想を加えなくていい!」
メーラー
「返事はどうしますか?」
ナツコ
「書くわけないでしょ!」
メーラー
「書かないと、ひがんでると思われますよ」
ナツコ
「うるさいわよ!」
メーラー
「わたしのSMTPが返事を送りたくてウズウズしているんですけど」
ナツコ
「なによ、SMTPって」
メーラー
「SMTPっていうのは私の体内に内蔵されているプロトコルですよ、
『シンプルメールトランスファープロトコル』の略です」
インターネットで電子メールを送信するためのプロトコルで。
サーバ間でメールのやり取りをしたり、クライアントがサーバに
メールを送信する際に用いられ、ポート番号25番を使用します
ウズウズ…ああ、ダメだ、メール送りてえ!ええい、送っちゃえ~」
ナツコ
「ちょっと、ナニをやったのよ!」
メーラー
「我慢できなかったんで、私の方でリツコさん宛のお返事を書いて
メールを返信しておきました」
ナツコ
「勝手に送らないでよ!なんて書いたの!」
メーラー
「『※未承諾メール 今だけのチャンス この機会を逃したら
もうアナタに幸福は訪れないカモ でも恨みます!』
って書きました」
ナツコ
「モロ、迷惑メールじゃん!なんて事してくれたのよ」
メーラー
「貴方の気持ちを大便したんです」
ナツコ
「それを言うなら代弁でしょうが!」
メーラー
「あっ!」
ナツコ
「なによ」
メーラー
「メール受信してえ~!」
ナツコ
「はあ?」
メーラー
「わたし中のPOP3がメールを受信したくてウズウズしているんです」
ナツコ
「勝手に受信すれば!」
メーラー
「POP3というのは、メール受信用のプロトコルで、『ポストオフィスプロトコル
バージョン3』が正式名称で、ポート番号110番をつかいます、
POP3はさっきのSMTPとセットで利用されて、
インターネット上での標準のメールプロトコルになっています。」
ナツコ
「誰も聞いていないわよそんなこと!」
メーラー
「ナツコさん怒らないで、ハクビジンが台無しです」
ナツコ
「ハクが余計よ!」
メーラー
「あれこれ漫才やっているうちに、メールが受信できました」
ナツコ
「漫才なんてやってないわよ!」
メーラー
「送り主、タツヤさんからメールが届いているようです」
ナツコ
「えっ!タツヤさんからですって、早く読んで頂戴!」
メーラー
「残念ながら削除してしまいました」
ナツコ
「コラー、なんで消すのよ!よりによってタツヤさんからのメールだったのに」
メーラー
「タツヤさんになりすましたウイルスメールだったら困るでしょ」
ナツコ
「そんなの受信前に確認しなさいよ!」
メーラー
「それが、POP3には弱点がありまして、ユーザがタイトルや発信者を
確認する前に、クライアントが全メールを受信してしまうため、
発信者やタイトルの一覧を見てから受信するかどうか決める事はできない
んです。受信前に確認するならIMAPのプロトコルが必要になりますね」
ナツコ
「そういう問題じゃない!」
メーラー
「おお?もう一度、タツヤさんからのメールが届いたみたいです、
削除していいですか?」
ナツコ
「絶対にダメ!早く読みなさい」
メーラー
「『ナツコさん、さっきのメールなんだけど、あのメールに書いた事は
忘れてくれ、俺はどうかしていたんだ』だそうです。」
ナツコ
「ウキー、ますます、気になるじゃな~い!」
メーラー
「ナツコさん、現金だして、生きていれば、またいいこともあるよ」
ナツコ
「それをいうなら『元気だして』でしょうが、現ナマだしてどうすんのよ!
メーラー
「よかったナツコさん、カラ元気が出てきたんだね」
ナツコ
「うるさい!そもそもフラれてない!」
メーラー
「タツヤさんには私が返事書いておきましたから」
ナツコ
「ちょちょちょっと!なんて事してくれたのよ!このバカ!アホ!」
メーラー
「あ、早速タツヤさんから返事が来ましたよ、削除しますね」
ナツコ
「ダメだって言ってんでしょ、ゴルァ!はよ読め!」
メーラー
「やれやれ、では読み上げますね、
『ナツコさんありがとう、まさかキミの方から、しかもあんな魅力的な
言葉でプロポーズをしてくれるなんて思わなかった、めちゃくちゃ感動したよ、
ナツコさん、僕からもお願いだ、結婚してくれ』だそうです」
ナツコ
「え?え!えええええ~~~!」
めでたしめでたし