「いらっしゃいませ~、本日は当エレベータにお乗り頂き
ありがとうございます。何階でございしょうか?」
「え~っと」
「0階でございますね、ありがとうございま~す」
「ちょっと待てい!勝手に決めるなよ、
そもそも、0階なんて存在するわけないだろ!」
「今日のコラムの性格上、仕方のないチョイスです」
「いきなり意味不明発言かよ」
「扉の方、お熱くなっていますのでお気を付けて下さい」
「なんで扉が熱くなるんだよ!」
「お待たせしました、0階『RAID0』でございます。」
「どこだよ、0階って!」
「RAID0はデータを複数のハードディスクに分散して同時並行で
書き込む事により、ディスクの速度を向上させる技術です
これをディスクストライピングと言います。」
「そんなコトは、誰も聞いていないよ!いいから5階に言ってくれ」
「1階でございますね、ありがとうございま~す」
「コラ待て、なんか全力で間違ってるぞ!
俺は1階から乗ったんだから1階に行っちゃ意味無いよ!」
「お客様、道に迷ったときは、まず初心に帰る事が大切なんです」
「エレベータなのに道に迷うなよ」
「お待たせしました、1階『RAID1』でございます。」
「戻って来てどうするよ」
「お客様、黙って私の話を聞きやがれでございます。
RAID1は2台のハードディスクに同じデータを同時に書き込む事により
1台が壊れても全然問題なしという障害に強い技術でございます
コレをディスクミラーリングといいます。」
「知らねえよ、そんなこと!」
「お客様、あまり目ゴリラをお立てにならないで下さい…」
「俺が立てているのは目くじらだよ!」
「あっ!」
「なんだよ」
「お客様がそんな事、言うから、私思わず2階に行きたくなってしまいました」
「お前の揺れる乙女心で俺を移動させるな~!」
「♪苦しくたって、悲しくったって、エレベータの中では、平気なの~♪」
「…?」
「♪だけど、ナニかが出ちゃう、女の子だモン♪」
「ナニが出るんだよ!!」
「お待たせしました、2階『RAID2』でございます」
「2階はお前の希望で強引に連れてきたんだろうが!」
「そうなんですけど、2階はもう、気分的にどうでも良くなったので、
3階に行きま~す」
「待てコラ、瘋癲娘!解説しないのかよ!」
「だって『RAID2』なんてどうでもいいんだもん」
「どうでもいいなんて行ったら、RAID2が可哀想だろうがよ、
RAID2は、ハミングコードと呼ばれる誤り訂正符号を生成し、
データとともに分散して記録する方式だよ、
なんで俺が解説しているんだよ。」
「実用化もされていない技術の解説ご苦労様です。」
「お前が言うな!」
「お客様が解説なさっている間に、3階を選んでおきましたので」
「俺の行き先は、お前の胸先三寸かよ!」
「まあ、お客様のエッチ」
「なにがどうエッチなんだよ?」
「じゃあ、お客様のデッチ」
「人を丁稚奉公の商人みたいに言うな!」
「お待たせしました、3階『RAID3』でございます」
「はあ、もう俺、疲れた」
「お客様、事切れるのは私の解説を聞いた後にして下さいな
RAID3は複数のディスクの内の1台を誤り訂正符号用に割り当てて
その他のディスクをデータ用にする構成のRAID技術なんです
データ用のディスクを複数台にすれば、同時並行記録による高速化も
可能なんですよ」
「へー、そう、よかったね」
「お客様、ヒドイわ!そんな素人丸出しのリアクションで、
私が喜ぶと思っているの?空気読みなさいよ!」
「なんで突然、逆ギレなんだよ!」
「ああ~大声で絶叫したら、スッキリしたわ、さて5階に行きま~す」
「ちょっと待て、4階は行かなくていいのか?」
「ああ、『RAID4』ね、いいのよ、あんなマイナーな技術は」
「お前、性格悪いな…」
「『RAID4』なんて、『RAID3』と殆ど同じよ、違う所っていったら
データの分散をビット単位ではなくブロック単位で行なう所ぐらいじゃない
めんどくさいわ、ハイ通過通過っと…」
「はあ~やっとこれで5階に行ける…」
「良かったですね、願いが叶って」
「お前が真っ先に向かってりゃ、何の問題も無かったんだよ!」
「ああ、そうか、お客さん、災難ですね」
「オマエがぬけぬけと言うなよ!」
「そんな、ヒドイ…そんな言い方したら、まるで私が図々しい
みたいに聞こえちゃうじゃないですか」
「実際に図々しいんだよ!全く、馬鹿も休み休み言え」
「馬」
「はあ?」
「鹿」
「本当に馬鹿を休み休み言うなよ!」
「お客様、私が休み休みしている間に、5階は通過してしまいました」
「ウヒー、なんて事を!」
「5階に降りれなかったお詫びに、せめて『RAID5』の解説を…」
「要らないよ!すぐに引き返せよ」
「RAID5は、複数のディスクにデータと障害復旧用のパリティデータを
分散して書き込む事によって、高速で、障害に強い、最も普及している
RAID技術なんですわ」
「俺の話、全く聞いてないだろ!」
「そんな事はありませんわ、2割程度、聞いていました。」
「8割方聞き流しかよ!」
「そうです、鯉のぼりの上で、カラフルにたなびく、美しい姿…」
「それは、吹き流しだよ!」
「お客様、あまり興奮なさらない…うっ」
「どうした?」
「ちょっと、お腹が」
「大丈夫か?」
「うううっ、出るっ…」
ぷぅ~
「…なんだよ、今の濁音は」
「さ、さあ、ボンバーマンが自爆したんでしょうか」
「絶対違うよ…じゃあ俺の鼻腔に絡みついてくる、
この脱力感を覚える香りは何だ?」
「…温泉タマゴの特売でしょうか?」
「それも、絶対違うと思うな、じゃあ、俺の心の奥から
込み上げてくる、このやるせない感情は一体、なんなんだよ」
「それは、間違いなく恋ですわ、やだ、お客さんったら、ポッ」
「そんな甘ったるい感情ではないぞ!」
「照れなくていいのに」
「一言いっていいか?」
「お伺いしますわ」
「さっきから、聞いてりゃ、屁理屈ばっかり言うな!」
(今日のネタは過去のコラムのリメイクだっちゃ♪)