~シーン1 浜辺にて~
裏島「これこれ、少年達、カメを虐めてはイカン、可哀想ではないか
オジサンが、お小遣いをあげるから、あっちに行きなさい」
カメ「ありがとうござます。『マリオに踏まれろ』とか『1UPさせろ』
とか言われて、精神的虐待を受けていた所でした。」
裏島「へえ、最近のカメ虐めは、言葉責めなのか」
カメ「本当に助かりました、では私はコレで…」
裏島「待て待て待て、なにか忘れてないか?」
カメ「ああ、そうでした、きびだんごを貰うの忘れてました。」
裏島「違うよ、きびだんごだと、物語が変わって来ちゃうだろ?
俺を連れて行く場所があるだろ?」
カメ「月ですか?」
裏島「アホウ!俺はかぐや姫じゃないんだよ!月に行っても
酸欠で苦しいだけだよ」
カメ「う~ん、わからないなあ」
裏島「ああもう、じれったいなあ、お前カメなんだろ!カメを助けたんだから
俺は竜宮城に連れて行ってもらえるのがお約束なんじゃないのか?」
カメ「ああ、竜宮城ですか」
裏島「やっと理解したか」
カメ「竜宮城は止めたほうがイイですよ」
裏島「なんでだよ、心配しなくても、今日び、俺は玉手箱トラップなんかには
100%、引っ掛からないぞ」
カメ「そうじゃないんですよ、竜宮城って、経営難で、
会社更生法を申請しているんですよ」
裏島「ハウステンボスかよ!」
カメ「だから、アトラクションなんかがかなりショボくなってて、行っても
値段分ほどは楽しめない可能性が高いんです。」
裏島「竜宮城って有料だったのかよ!でもさ、俺はお前の命の恩人なんだから
入場料ぐらい負担してくれよ」
カメ「はあ、図々しいですね。まあ仕方ありません、では竜宮城に行きましょう」
裏島「やった!そう来なくっちゃ!ちゃんと、オプションで
乙姫様のお酌も付けろよ!魚の踊りはいらねえからな。」
カメ「はあ~、ちゃんと酸素ボンベは装着して下さいね。」
~シーン2 竜宮城~
乙姫「おお、カメよ、よく戻ってきました、その人が新しい派遣社員ですね」
カメ「はい、そうです」
裏島「おいおい、ちょっと、なに言ってるんだよ、派遣社員って、
俺はタダ酒が飲める宴会をするためにここに来たんだぞ」
乙姫「カメや、この人は何を、のたまわっているのですか?」
カメ「ああ、潜水病で頭が一時的に放心状態なんでしょう、
大丈夫ですよ、今日から働いてくれるそうです。」
乙姫「おお、それはよかった、では裏島さんでしたっけ?この労働契約書に
サインをお願いします。」
裏島「はあなんだよ?突然、労働契約うんぬんかんぬんって言われても」
乙姫「おお、その程度の事も知らないのですか?労働契約とは、
労働者が労働力を提供し、使用者がその労働力に対する対価を
支払うことを約した契約をいい、雇用契約ともいいます。
そして、労働契約には以下の3種類があります。
1.派遣:労働者は派遣元企業と雇用関係があり、指揮命令は派遣先企業
にあります。派遣元企業と派遣先企業では、労働者派遣契約を締結します。
2.請負:労働者は請負業者と雇用関係、指揮命令があります。
請負業者と注文主は請負契約を締結します。
3.出向:労働者は出向元・出向先の双方と雇用関係がある「在籍出向」
と、出向先のみと雇用関係がある「移籍出向」があります。
どちらの場合も指揮命令は出向先にあります。
また、出向元と出向先は出向契約を結びます。
このうち、アナタは派遣契約による、派遣社員になるんですよ」
裏島「イヤイヤ、そういう問題じゃなくてね、お酒のお酌をして…」
乙姫「『派遣』について以下にもう少し詳しく解説しますわね。」
◆雇用関係:雇用契約は『派遣元』と『派遣社員』の間で結ばれます。
雇用契約ですから労働基準法が適用されます。
◆請負関係
請負契約(派遣契約)は『派遣元』と『派遣先』の間で結ばれます。
派遣先は派遣元に希望する人材を要求して、それに適合する
人材を派遣してもらいます。
◆業務上の指揮命令
業務上の指揮命令は『派遣先』から『派遣社員』に対して行なわれます。
■派遣社員からすれば、その労働は極めて特殊な状況に置かれます。
過去には、労働上の苦情が生じた時に、派遣元も派遣先もいい加減な
対応をしてが対策がおざなりになるというトラブルが繰り返されました。
これを受けて、派遣社員を守るために『派遣法』が制定されました。
労働基準法では雇用関係にある派遣元と派遣社員の間に適用されますが、
派遣法は労働基準法を補い、派遣先にも派遣元と同じように一定の責任を
持たせるものです。つまり派遣先は派遣社員をいい加減に扱う事が
禁じられたのです。
■派遣社員は労働上に不満があるなどして苦情を申したてる場合は、
まず派遣元に申したてます。派遣元はその苦情があったことを派遣先
に通知し、その解決に向かって努力しなければならないとしています。
派遣元からすれば派遣先はお客様です。苦情があってもなかなか
それ伝えられないという背景があったのではないでしょうか。
またそれを受けて、派遣先にもそれを受けるための責任者を置いたり
派遣先管理台帳を設けたりすることを義務付けています。
■派遣先は契約期間中は正当な理由無く派遣契約を解約することは
できません。
これは労働基準法の解雇にあたる規定と同様の厳しいものです。
■派遣先は、派遣社員が派遣元と締結している雇用契約の内容を超えて就業
させることはできません。派遣先は派遣社員に対して業務上の指揮命令
することができますが、その範囲は雇用契約の内容を超える事はできません。
もし、契約内容を超えるような就業をさせる時は、派遣社員の同意を得て、
あらかじめ延長できる労働時間や就業できる日を決めて派遣契約書に記載
する必要があります。
乙姫「といった感じですわ、アナタは『カメ人材スタッフサービス』から
派遣されてきて、『竜宮城』で私の指揮命令を受けて働くという
労働形態になります。」
裏島「あの~、え~っと…話がよく見えないのですが、
私の酒池肉林の夢はどうなったんでしょうか?」
乙姫「夢は夢のまま、心の中にしまっておいた方が美しいですわ、
それじゃ、雑巾がけから宜しくお願いします。」
カメ「じゃあ、裏島さん、頑張って下さいね、私は地上で、スカウトを
続けてきます。」
裏島「はっ!しまった!俺って、ダマされている!」
乙姫「ほら、そこ!無駄口を叩かない!ちゃんと雑巾がけしなさい!
コラ!陣羽織のピーチ兄さんも、サボらないで、しっかり働かないと
ここを出て鬼ヶ島を目指す事なんて夢のまた夢よ。
ハイハイ!赤い腹掛けのみの半裸変態カッパ頭君も
ちゃんと角材を運んでちょうだい!まったく、アナタは馬鹿力
以外に取り柄はないのかしら…」
裏島「しかも、俺以外にも、ダマされているヤツがいる!」
乙姫「はい、みなさ~ん、ジャンジャン頑張って下さ~い。」
~シーン3 浜辺にて~
裏島「ハアハア、やっと帰れた、あの女、8時間も労働させやがって
『明日も働け』なんて言われたけど、なんとか断ったぞ!」
カメ「お疲れさまだったね、ハイこれ今日の分のお給料!」
裏島「チックショ~、お前の為にヒドイ目にあったぞ、
なんで、報酬を玉手箱に入れて渡すんだよ!
怖くて開けられないじゃん!」
カメ「大丈夫だよ、大したものは入ってないって」
裏島「それはそれで困るよ!せっかく働いたんだから、大したものを入れろよ!」
カメ「ハイハイ、じゃあ、こっちのスゴイ物が入っている玉手箱をどうぞ」
裏島「それじゃ怖くて開けられないんだよ」
カメ「怖いなら、両方とも返してくれてもいいよ
でも、開けないと、給料は手に入らないけどいいの?」
裏島「それもダメッ!スゴイのを開けてやるっ!」
ボワワ~~~~ワワン
~シーン4 ニュース~
アナ「昨夜、『有限会社 竜宮城』が、派遣法違反で摘発されました、
当社は、2年前に会社更生法を申請しており、会社の再建の為に、
派遣労働者を安い賃金で労働に従事させていた模様です。
なお、原告の裏島ちゃん(7歳)は、インタビューに対し、
『常に被害者の裏をかく手口は極めて悪質、絶対に許せない』
と声を荒げていました。」
(ズバリ!今日のネタは過去のコラムのリメイクでしょう!)