カコ~ン カコ~ン
シシオドシの音が風流をそそる、純和風の料亭の一室で、
しめやかにお見合いが開催されている。
いかにも世話好きそうな仲人婦人はお互いを紹介した。
仲人
「え~、こちらが光ファイバさん、今注目の高速通信で
使われるエリート伝送媒体さんよ。
そして、こちらはハナ子さん、
とっても器量よしのお嬢さんでしょ」
ハナ子さん
「はじめまして」
光ファイバ
「こここ、こちらこそはじめまして」
顔を赤らめて緊張する光ファイバ君、どうやら初めての
お見合いの様だ。しかし、その蝶ネクタイはいただけない。
仲人
「ささ、後は若い者同士に任せて、年寄り連中は退散する事にしましょ」
お約束の一言を言い放つと仲人婦人と両家の両親はいそいそと部屋を後にし、
二人にはしばしの沈黙が訪れた。
やがて、勇気をもって、光ファイバ君が話しかける。
光ファイバ
「ごごご、ごちゅみは?」
光ファイバ君、それはいけない、しょっぱなからカミカミである、
どうやら趣味の事を聞いたようだ。
ハナ子さん
「そうですね、日舞を少々」
光ファイバ
「そそそ、それは素敵だ。僕も日舞はそこそこイケるんですよ」
光ファイバ君、嘘は良くない。
ハナ子さん
「光ファイバさんのお仕事はなんですの?」
光ファイバ
「光通信によるデータ伝送の伝送媒体です。」
ハナ子さん
「まあ、難しくてよくわからないわ」
光ファイバ
「すすす、スミマセン、つまり僕は、光をチカチカ
点滅させて、データを送るケーブルなんです。
この光のOn/Offによりデジタルにデータを伝送するのが
仕事で、他のケーブル達よりも短時間でたくさんのデータを
送れることが自慢なんです」
ハナ子さん
「まあ、すごいわ。じゃあとってもエリートさんなのね」
光ファイバ
「へへへ、まあ、なんというかあれですね、
僕の体はガラスやプラスチックの細い繊維でできているんですけど、
非常に高い純度のガラスやプラスチックが使われており、光を
スムーズに通せる構造になっているんです。」
ハナ子さん
「まあ、すごいわ。じゃあとってもキラキラさんなのね」
光ファイバ
「へへへ、それが違うんですよ
僕の体の内部は、光の伝搬路となる“コア”と呼ばれる部分と、
光をコア内に閉じこめるための“クラッド”と呼ばれる部分との
2層構造となっていて、この“クラッド”が鏡の役割を果たし
光が外に漏れない構造になっているんですよ。
なんなら、ちょっと見てみます?見てみます?」
光ファイバ君は勢いに任せて服を脱ぎだした、調子に乗りすぎである。
ハナ子さん
「まあ、すごいわ。とっても細いのね」
ハナ子さん…あんたも止めようよ。
光ファイバ
「凄いでしょう!今のブロードバンド高速通信は、僕の活躍なしには
成立しないんですぜ!
なにしろ、メタリック系の導体に比べると極めて低損失さらに広帯域
そして、無誘導に加えて漏話は発生しないときたもんだ、てやんでえ」
光ファイバ君、キャラが変わっているぞ。
ハナ子さん
「さっぱりわかりませんけど、
低損失ということは、1つのケーブルで転送できる距離が長いということで
広帯域ということは、転送速度を早くできるということで
無誘導に加えて漏話は発生しないということは、雑音に強く品質が良い
という事かしら。」
ハナ子さん…あんたスゲエぞ…。
光ファイバ
「ハナ子さん、そこまで完璧に理解してくれるなんて、あなたはなんて素敵なんだ
ああ、是非僕と、僕と交換日記をして欲しい」
光ファイバ君、もっと上を望もうよ!
ハナ子さん
「ええ、よろころんで」
ハナ子さん…断れよ。
光ファイバ
「やった~!僕はこれからの将来性に優れています、最近フレッツ光ブロード
バンドで話題のFTTHなんかも僕なしでは成立しないくらいです
こんな、僕ですが宜しくお願いします」
交換日記用のノートを差し出す光ファイバ君、
それを笑顔で受け取るハナ子さん、どうやら二人のお見合いは
うまくいったようです。
そして、第一回目の交換日記の内容には
「私、コストが安いツイストペアケーブルさんとお付き合いする事にしました
このお見合いはご縁がなかったということで………ハナ子」
光ファイバ「なんでだ~~~!!!」